カキナクルー

観た試合の感想なんかをテキトー勝手に書き殴ります

パイェに出会えた夜 【ユーロ16 グループA第1戦 フランス対ルーマニア】

さてさて。

 

ようやく始まりましたユーロ2016。個人的にはW杯より楽しみにしている大会。チーム数が24チームに増えて、中身が薄くならないか不安だけど、心配したって仕方ない。まずは目の前の試合を楽しもう。

 

開幕戦はフランス対ルーマニア
ドメネクという愚将のおかけで一時期は国際大会の一線から退いていたフランスだけど、2012年からは徐々に国力をつけ、近年はポグバにマルシャルやコマンといった若手の台頭も著しい。開催国ということもあって、今大会では優勝の最有力候補
そんなフランスのスタメンの中、目を引くのはパイェ。
今季ウエストハムでブレークした29歳の遅咲きゲームメーカー。予想布陣では左ウイングになってる。純粋なウイングとしての働きならマルシャルやコマンの方がよさそうだけど、デシャンはおもしろい起用をしてきた。

 

試合が始まってみると、パイェは自由なポジショニングでプレー。右に左に真ん中と、どこにでも顔を出してボールをもらい、縦にパスを出す。空いたスペースはグリーズマンサイドバックがケア。エブラもサニャも攻撃的だから、喜んで顔を出す。
なにより、パイェのパスがいい。危険な臭いのするところに容赦なくパスを出す。取られたって気にしない。リスクを恐れず、センスを信じてガンガン出す。
こんな気持ちのいいパサーを見るのは久しぶり。しかも質がいいからたまらない。ウエストハムよりも、自由にプレーさせてもらってるからフランス代表のパイェの方が輝いてみえる。ボールをキープしても巧みな足さばきで奪われる気配がまるでない。試合途中からジダンの姿を重ねたほど。
先制点もパイェのキックから生まれる。57分、左サイドでエリア内に放り込むとジルーがGK競り勝ち流し込んだ。

 

ただ、その数分後、エブラがエリア内でやらかしちゃってPK献上。キッチリ決められて追いつかれてしまう。デシャンは交代カードを切るけど、うまく働かず時間はずるずると終了間際に。ルーマニアは久々の国際大会参戦、ビッグクラブでプレーしてる選手もいないし、たとえ引き分けでも波乱と言える展開。スタジアムを埋めた多くのフランス人はルブルーの勝利を拝みにきてるのに。

しかし、スタジアムに漂いはじめた嫌な空気を一変したのもパイェだった。

バイタルエリアでボールを受けるとDFをかわし、左足一閃。豪快に振り抜かれた足から放たれたシュートは綺麗にゴールネットに突き刺さった。

 

これを見たとき体が震えた。パイェは「ホンモノ」だ。文句なし。誰がなんと言おうと6月10日はパイェ記念日。パイェ祭り。パイェ神。
すんごい選手を見つけてしまった。世界がパイェを目撃した日。そんなユーロ2016開幕戦。

その後、時間稼ぎのためにピッチを退くけど、目にはうっすらと涙が。もちろん悔し涙なんかじゃない。まだ何を勝ち取ったわけでもないけど、自分がどれだけ大きなことをしたのか理解した上での涙なんだろう。29歳にしてようやくつかんだチャンス。想像もつかないほどの思いがパイェにはあったに違いない。

 

そのまま試合は終了。危ないながらも、パイェの活躍でフランスが開幕戦勝利を収めた。
フランスが苦戦したのにももちろん理由がある。負けはしたものの、ルーマニアはグッドチームだった。コンパクトに守りながら前線から積極的にプレスをかける堅実な戦い方。惜しむらくはこれといった攻撃の形がなかったこと。高さなりスピードなり、一つでも相手が嫌がる武器を持ってると違うんだろうけど、今の戦力じゃ望めないのかも。

 

そんなルーマニアを振り切ったフランス。短い期間でパイェを中心としたチームを完成させたデシャンに拍手。ポッと出の29歳にチームを託すのは相当の覚悟がいったろうけど、それも監督の慧眼。後半、勝ち越し点がほしい展開で思い切ってポグバを下げてマルシャルを入れたり、采配にも非凡なものを感じる。ドメネクの悪夢から6年、フランスはいい監督に出会えたご様子。
グリーズマンの不調は想定外かな。CLの決勝でも冴えなかったし、コンディション調整に苦労してる。でも、他にもマルシャルやコマンだっているし、そこらへんはどうとでもなるか。

 

ということで。
フランスのパイェに出会えた素晴らしい夜。これだからユーロはやめらんない。パイェにジダンの姿を見た、っていうのも言い過ぎでもなんでもなく正直な気持ち。今からでも遅くないから、ジニャクがつけてる似合わない10番をパイェに背負わせよう。
ジダンでユーロといえば思い出すのは2000年。あのときはトレセゲのゴールで優勝したけど、果たして今のフランスにトレセゲになれる選手はいるのか。一応ゴールを決めたとはいえジルーではぶっちゃけ心配。かといってジニャクでもないはずだ。ベンゼマはもういない。果たして。