カキナクルー

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「プレミアリーグはぬるくない」 14-15プレミアリーグ第1週 ユナイテッドvsスウォンジー

さてさて、ようよう始まりました14-15プレミアリーグ

昨季は御大が去り、モイーズの下で失意のシーズンを送ったユナイテッド。あの地獄のような日々に終止符を打つことが出来るのか。
大役を任されたのは希代の名将ファンハール。ワールドカップ3位という輝かしい実績を引っさげてマンチェスターにやってきた。
その話題性と強烈なカリスマ。昨季ヨーロッパカップ戦の出場権も得られなかったユナイテッドだけど、彼のおかげで良くも悪くもプレミアの台風の目となってしまった。
2ヶ月前のW杯を席巻したあの3バックはプレミアでも果たして通用するのか。ユナイテッドサポのみならず、世界中のフットボールファンが注目するところ。

ということでユナイテッドの布陣は3-4-1-2。
GKはデヘア。3バックはスモーリング、ジョーンズ、ブラケット。中盤は右からリンガード、フレッチ、エレーラ、ヤング。トップ下にマタで、2トップはエルナンデスルーニー
ペルシは調整が遅れてるのかベンチにも名前はない。その代わりにフェライニやナニ等戦力外通告されたと報道があった選手の名前がチラホラ。9月にはどれぐらいの選手が残ってるだろう。
ベンチには当然香川も名前も。ペルシ以外にもキャリック等怪我人はいるけど、エレーラがボランチの位置でプレーするならチーム内順位は実はそんなに低くないはずだ。
移籍市場が閉まるまでにどんな選手を補強するかにもよるんだけど、一つ確かなのは開幕時のラインナップと9月最初の試合のラインナップでは大分違いがありそう、ということ。ファンハールがブラケットやリンガードに全幅の信頼を寄せているとも思えないですし。

対するスウォンジーは4-5-1。
GKはファビアンスキ。DFは右からランヘル、アマト、ウィリアム、テイラー。ダブルボランチにシェルビーとキ。中盤は右からダイアー、シグルドソン、ルートリッジで1トップにボニー。

試合はユナイテッドがボールを支配する展開。
この時点で既にW杯のオランダとは異なるチームだと分かる。ファンハールはブラジルでは3バックという名の5バックで自陣を固め、ロッベンやペルシの個人技で高速カウンターを仕掛ける戦い方をしていた。
でも、それはあくまで短期決戦のトーナメントだからこそ出来る戦い方、というか許される戦い方。
今、ファンハールが指揮しているのはマンチェスター・ユナイテッド
数十年イングランドの最前線を走ってきた常勝軍団。昨季は思わぬズッコケ方をしてしまい苦杯を飲んだが、それでもまだ御大時代に築かれたプライドは高くそこにある。
そんなクラブのサポーターが、強豪クラブならまだしもスウォンジー相手にオールドトラッフォードで腰の引けた戦い方をするなんて、決して許しはしないだろう。そういう戦い方が長きに渡るリーグ戦で短期決戦の時と同じような効果が得られるかも疑問。
それはファンハールだって分かっている。だからプレシーズンでもボールを支配する戦い方を意識しながらチームを作り上げてきたし、なかなかの手応えもつかんだ。
要するに、W杯のオランダと今のユナイテッドでは、ファンハールは全く違った形のアプローチでチームを作っているということ。

それを踏まえてユナイテッドを見てみると、最終ラインの位置取りは高く、左右のセンターバックが4バックのサイドバックと同じぐらいまでワイドに広がる。そのため中盤のサイドハーフの位置もかなり高く、一言で言えば攻撃的、見方を変えればかなりリスキーな戦い方だ。
その間でフレッチ、エレーラ、マタらとボール交換しながら、バイタルの隙を見つけつつそこを攻めたり、数的有利でサイドを攻略したりする。

試合はユナイテッドペースで進んでいたものの、リンガードが24分に怪我で途中交代。
プレシーズンに結果を残しせっかくつかんだチャンスなだけに、なんたる不運。それまでも懸命に走り回って働いていただけに、もうちょっと見ていたかった。

代わりに入ったのはヤヌザイ。しかし、新11番デビューの4分後にユナイテッドは痛い先制点を許してしまう。
スウォンジーの右サイドからの崩し、ユナイテッドの選手はわらわらとそのサイドに寄ってしまいバイタルはガラガラ。そこにするすると侵入するキ。人数を固めていたはずのユナイテッドだけど、なぜか簡単に突破を許してしまい、マイナスのパスをキがどフリーでシュートを放って1-0。なんだこりゃ。かなりお粗末な失点シーン。今のユナイテッドはまだまだ構築段階なんだなと痛感させられる。戦術というよりは、それ以前の意識レベルの問題。特に中盤の選手たちはこの布陣ではどこに誰がいて、自分が動いたらどこがどう空くかという最も基本的なところから学びなおさないといけないだろう。

その後、ヤヌザイのサイドから何度か突破を試みるも、最後までは崩し切れず1-0のまま前半終了。
プレシーズンの大会では負けなしで優勝し、好調のように見えたユナイテッドだけど、やはり公式戦、プレミアリーグはぬるくない。
それを身に染みて思い知ったか、ファンハールはハーフタイム中に決断を下し、後半開始からは4バックに。ジョーンズは右SB、ヤングが左SBに入り、エルナンデスい代わって投入されたナニが左サイドで、4-4-1-1のような形。
ダメだと判断すればさっさと切って捨てる、その潔さもファンハールの特徴だ。W杯前も4-4-2で作ったチームをストロートマンの怪我で思い切って3-5-2に変えたし、その3-5-2もうまくいかなかったらあっさり4-3-3に変えてたし。

その決断はすぐに実を結ぶ。
後ろにひとり増えたことで守備の荷が降りたヤヌザイが右サイドで果敢にドリブルを仕掛け、52分ヤヌザイが奪ったCKをルーニーがオーバーヘッドキックをガツンとかまして1-1、ユナイテッドが同点に追いついた。

その後も有利に試合を進めるユナイテッド。
やっぱりやり慣れた4バックの方が選手たちものびのびプレー出来るのか、ボールが前半よりもスムーズに流れている。見ている側もこっちの方が落ち着く気がするのは気のせいでもないだろう。
64分には、エレーラに代えてフェライニ投入。プレシーズンでは一度もプレーせず、ファンハール自身もこれまでそっけない態度を見せていたフェライニを開幕戦のど本番でいきなり使ってくるんだから、名将ってやっぱなに考えてるか分かんない。

この交代を機に一気に逆転といきたいユナイテッドだったけど、72分、スウォンジーのモンテロのクロスをルートリッジがシュートミス、しかしこのこぼれ球にシグルドソンがしっかりつめてて落ち着いてゴール左隅に流し込み2-1、ユナイテッドは勝ち越し点を許してしまった。

イケイケムードから一転、窮地に陥るユナイテッド。
ただの偶然、あくまでも偶然なんだろうけどフェライニ投入を境に、というのが気になってしまう。なんか誰かさんの怨念でもフェライニのアフロに絡まってないか?
しかもリードしたスウォンジーに運動量が戻ってきた。交代枠も使い切り、打つ手が限られるファンハール。さあ、ここからどんなマジックを見せてくれるのか!?と思ったら、フェライニを前線に上げパワープレイに走ったからさあ困った。それはあんまり効果がないとザッケローニが教えてくれたよ、と極東の地から叫ぶのもなんだか虚しい。でも、裏を返せば今のユナイテッドには武器らしい武器はそれぐらいしかないということなんだろう。

ということで。
1-2でユナイテッドは開幕戦黒星。プレシーズンとプレミアリーグは別物です、とオールドトラッフォードにキツイ洗礼をもらってファンハールの初陣は終了した。
注目された3バックはあまり機能せずに終わった。プレミアリーグに3-5-2は適しているのか。白か黒かハッキリつけれる問題じゃないし、身も蓋もない言い方をすれば「使い方による」んだろうけど、この試合を観てて感じたのは「3バックの優位性は相手が同等、もしくは格上の時に発揮されるんじゃないか」ということ。
3バックとは名ばかりの5バックで守り、中央にも人数を固めて奪ったら素早いカウンター。W杯で炸裂しまくったこの守備的な使い方でこそ、4バック全盛の今、3バックが輝くんであって、普通に中小クラブ相手に攻撃的なスタイルで3バックを使おうとすると、カウンターのリスクは高まるし、選手同士の距離感やパスコースの長さなどなど、4バックとの勝手の違いからミスがポロポロと出て、そこを付け入られそう。中小クラブは相手のミスを今か今かと待つ戦い方が基本だし。で、先制されて、その後はガッチガチの守備ブロックを作られるなんて展開は、想像するだけで寒気がする。

もちろん、ファンハールだってそんなリスクは承知しているだろうし、変に固執する人でもなさそうだから、あまり心配はしていない。それにそんな考えを超越するような画期的な戦い方を見せてくれるんじゃないかという期待もしている。
2トップの下にトップ下を置くのは、ある意味男のロマンだ。今や絶滅の危機に瀕したこの古き良きトライアングルに再び脚光を浴びせたファンハールには感謝の思いすらある。
自分の中で真っ先に思い浮かぶのは、ユーベのピッポデルピエロジダン。彼らの前には敵なぞなかった。他にもビアホフ、ウェア、ボバンとか、日韓の時のロナウドロナウジーニョリバウドの3Rとか、この三角形には夢や希望が詰まってる。マンチェスターの地を爆心地としてもう一度ブームの火が世界中に燃え広がらないだろうかと夢想をしている男が大阪にひとり。

話が大分横に逸れてしまった。
ほろ苦い思い出となってしまったファンハールオールドトラフォードデビュー。しかし、言い訳したいことはいっぱいあるはず。2失点目は運もなかったし、人も相当数欠けていた。ペルシ、キャリックはもちろん、新加入のショウにウェルベックバレンシアなどなど。
それどころかこの敗戦を利用だってするかもしれない。
やっぱり人が足りてないんだ、と。SBもCBも出来る人が1人か2人、そしてやはりもうひとりワールドクラスがいるだろう、と。
これは試合をみてても痛感したところ。マタが値段通りの活躍を見せてくれてればいいんだろうけど、今の所は3700万ポンドの匂いはいくらかいでもしてこない。それになにより個人技で崩せる選手。ヤヌザイは試合でその片鱗を見せてくれたけど、まだまだ発展途上だ。ナニなんて論外。ユナイテッドの最終目標を優勝に置くのならば、決定的に欠けているピースはこれ。ディマリア獲れれば夢みたいだけど、値段も実現性も未知数だし、こだわらずにいろんな可能性を探って移籍市場締め切りまでにド級ウルトラCを見せてくれる日がくるのをただただ祈るばかり。

個人的にはフレッチがフル出場してくれたのが何より。ファンハールを信頼している一番の根拠もここだったりする。万が一ファンハールがこけても、またCL出場権を逃しても、この柱さえしっかりしてくれればユナイテッドはくたばらない。ギグスがアシスタントコーチを務めてるし、まだまだそこかしこに御大の痕跡は残ってる。それらがある限り、ユナイテッドは絶対に復活するはずだ。