カキナクルー

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「"攻める"ということ」 J1 第11節 名古屋vsセレッソ

名古屋vsセレッソ録画観戦。

セレッソは前節と変わらず堅守速攻型の3-4-2-1。メンバー変更はアーリアに代わって拓実が入っただけ。このシステムには縦に速い攻撃しかけられる拓実の方が合うだろうし、アーリアはポポの聖域化しかけてたし、2つに意味で安心できたメンツ。

 

名古屋は4-4-2。玉田、永井、矢野、小川、闘莉王などなどメンバーだけみればセレッソに負けず劣らず豪華なメンツ。矢野貴章が右サイドバックやらされてるのには驚いたけど。西野さんはここでもアグレッシブだ。

 

前半4分、セレッソがいきなり先制。

俺の酒本の楔のパスからフォルランがダイレクトでラインの裏に抜け出した柿谷にスルーパス。これをキレイにゴールに向いてトラップすれば闘莉王はもう追いつけない。あとは落ち着いて楢崎の横を抜いて我らが8番待望の今季Jリーグ初得点。

 

フォルランのスルーパスに抜け出した柿谷がトラップアンドシュートというゴールパターン。これだよ、これ。開幕から待ち望んでいた理想の形を5月に入ってようやく拝むことができた。この2人の特性を一番活かせられるゴールデンライン

なのにフォルランの下に柿谷という並びが続いたせいで、ここまで長引いてしまった。フォルランが柿谷の動きを理解できるようになったってのも大きい。「レンケイニハジカンガカカリマス」って度々言ってたものね。

そういう意味でもこのゴールは得点以上の価値がある。重かった扉がギギギと大きい音を立てて開き始めたような、その向こうからこれまでたまりにたまったゴールが溢れ出してくるような、そんな予感がした瞬間。もちろん俺の酒本の決定的な"起点のパス"も忘れちゃいけない。

 

前半はセレッソのパスサッカーが炸裂して終始主導権を握る展開。前節まではロングフィードからのカウンターを狙う場面が多かったけど、この日は基本ショートカウンター狙い。西野さんのチームもパスでつなごうとしてたけど連携はセレッソより拙く、高い位置からのプレスもハマったのも功を奏した。

とりわけ蛍の攻撃参加が光る。フォルランの下の攻撃的な2人がサイドに寄るからバイタル付近にスペースが出来て、そこをうまく活用出来てる。柿谷らとのパス交換を見ても足元うまいし、良いパスは出るしで、蛍という選手のポテンシャルの高さを再認識。3-4-2-1の一番の利点はここかもしれない。

 

つい最近見たある記事の中で山口は「扇原が上がり過ぎて自分が攻撃参加できない」というようなことを言っていたけど、その辺りの問題はうまく解消出来たようで。

その扇原は攻撃参加を抑える代わりに、後方から高い精度のロングパスでサイドにボールを散らしたり、一発裏を狙ったりで攻撃の幅を広げてくれてる。シュートも積極的に撃つようになった。どうした、扇原。これまで頼りなかったのが、急に頼もしくみえてくるから、若いって素晴らしい。

 

ただ、チャンスは多いのに追加点が奪えないところが、ポポが再三言ってる悪い意味での「このチームは若い」ということなんだろう。南野は決定的なチャンスでフリーのフォルランを無視し強引にシュートを放つし。その積極性は買いたいけれど、撃つならもっと説得力のあるシュートを撃たなければ。

 

後半からは気合を入れ直した名古屋がセレッソを押し込む展開。セレッソは守備時5バックだから人数は足りてるけど、引きながら守ってしまったからうまくない。後ろから攻め上がってくる名古屋の選手に対応しきれず、後手後手の対応が続く。

 

するとやられた57分、カウンターで2列目から抜け出した小川を山下がエリア内で倒してしまいPK。染谷や康太ならともかく、山下がやらかしたんならもう諦めるしかない。しかも2枚目のイエローで退場。髪型を変えさわやかになった自分をザックにアピールしたいとこだったけど、とんだ厄日に。

このPKを闘莉王が思いっきり蹴り込んで1-1。 

 

1人少なくなったセレッソウイングバックが下がり4-4-1の形で対応。パッと見、普段のセレッソとあまり変わらない気がするのは、このシステムの隠れた強みかも。フォルランなら一人で9番と10番の仕事をこなせるでしょう。

65分には拓実に代えてアーリアを投入。カウンターの強い武器を手放すのは惜しいけど、今の拓実の出来では止むなしか。ワールドカップイヤーの今年、当落線上の選手を少なからず抱えるセレッソへの影響は実は大きいだろう。

73分には扇原に代えてゴイコ投入。開幕戦以来のゴイコボランチ。実はゴイコはパスも出せる。終盤、守備を強化する時に見てみたかったオプションなだけに少し期待。

 

1人少ないながらも4バックにしたことでボールポゼッションを重視するセレッソと、数の利でぶ厚いカウンターを仕掛ける名古屋と一進一退の攻防が続くしびれる流れ。

好機をものにしたのはアウェイのセレッソだった。

76分、待ちに待ったフォルランゴラッソ、略してフォルラッソ。左サイドで丸橋が2人をぶち抜きエリア内へ。すると中央になぜかどフリーのフォルランが。ウルグアイから来たセレッソのNo.10がこんなおいしいチャンスを逃すはずなく、マルのパスを丁寧にゴール右隅に流し込んで2-1。

 

それにしたって名古屋がゆるい。SBにぶち抜かれた田口と矢野貴章。オフザボールの動きもなかったフォルランを見失う闘莉王。1点目もそう。酒本は寄せられてなかったから楽にフォルランにパスが出せた。そのフォルランもバイタルでどフリー。いや、西野さんのチームだからといえばそれまでだけど。

 

リードしたセレッソは話が早い。このままボールをつないで逃げきれば勝利。そこには絶対の自信がある。10人でも問題なし。名古屋は闘莉王のポジションを上げてゴールを狙う。とりわけ足が速いわけでない33歳のセンターバックがカウンターの先頭を切り爆走している姿はなにかこうグッと胸に来るものがある。

 

しかしその努力が結実することはなく、セレッソが7試合ぶりの勝利。試合後ポポは「今日良かったことは劣勢の中で同点にされて、レッドカードをもらい10人になっても選手たちが相手にとって危険な攻撃を繰り出せていたことです」と言っていた。

10人になると3バックを維持せず4バックに移行しパスサッカーを選択したポポ。その分、名古屋のカウンターを喰らいヒヤッとする場面も多かったけど、粘り強く耐え、パスで攻め込む姿勢を崩さなかったことが勝ち越しゴールを呼び込んだ。こういう場面での手腕が見れたことはセレッソにとって大きい。

 

相変わらずシングルゴールの柿谷にはちょっぴり不満。この人は固め打ちというのをしてくれない。1点目を奪ってからは欲も薄くなり、積極的にサポートに回るようになった。そうじゃないだろ、と。この辺の変に大人ぶりたがる若さは今季も解消されないようだ。

 

ということで。6日には広州戦があり、10日には仙台戦があり、13日にはまた広州戦があって、17日の浦和戦を最後に休養期間。スカパーによるとセレッソは30日間で10試合もこなすようだ。再開までの間も代表選手たちはブラジルで激戦を繰り広げるわけだから、一流選手も楽じゃない。

 

「史上最攻」というスローガンを掲げるセレッソ。この言葉のせいというかおかげというか最近「攻撃的ってなんだっけ」と考えるようになった。ロングカウンターを狙った山東から神戸戦までのセレッソは攻撃的ではないだろう。山東戦以前の4バック時代もボールは保持するけれど攻撃的とは思わなかった。

ポゼッション=攻撃的ではないのよね。ボールを回せはしてもアタッキングサードで勝負が出来ずろくな攻撃が出来ないチームはままある。4バックのセレッソがそうだった。でも、今日のセレッソは間違いなく攻撃的だった。3バックになりさらに遠ざかったと思った攻撃的なサッカーに実は近づきつつある。

 

そのサッカーで結果がついてきた。だからこの1勝の価値は大きい。柿谷にもゴールが生まれた。しかも一番理想的な形で。この勝利で収穫したものを新鮮なまま広州戦に持っていければ、チャンピオンチームだって食えるだろう。